舞妓さんにはどうやってなるの?祇園花街の世界 舞妓・芸子の日常生活

祇園

京都の大学に通い足かせ7年間

祇園という日本でもトップレベルの花街でアルバイトをしていました

その時の経験をもとに、祇園の世界を裏も表も書いていきたいと思います

ここではまずは導入として花街を取り巻く専門用語を説明していきたいと思います

※2005年~2012年の話になりますので、現在のシステムとは若干異なることもあるかと思います

京都花街の専門用語集

五つの花街とは

花街とは芸子や舞妓がお客をもてなす場やその住居がある地区のことをさします

伝統を重んじる街並み景観を維持する条例が適応されており、電線が地中に埋められていたり、建てられる建造物の高さや景観が決まっています

京都には5つの花街があります

「祇園甲部」「祇園東」「宮川町」「先斗町」「上七軒」

いわゆる「祇園」と呼ばれる、最も有名な花街は「祇園甲部」のことをさします

有名どころの「祇園甲部」以外にも、それぞれの花街には昔からお客が分かれており、それぞれの文化が根付いてきました

「祇園甲部」

言わずとしれた祇園、花街といえばここの花街をさします。大石内蔵助が通ったお茶屋で有名な一力亭も祇園甲部です。

「祇園東」

清水寺の近くに位置しています。神社仏閣が多いことから、宗教関係者が歴史的にお客としていました

「宮川町」

近くに南座があります。その関係で歌舞伎役者が多く訪れ、芸能が栄えてきました

「先斗町」

京都の繁華街河原町付近に位置します。ビジネス関係者が多く訪れます

「上七軒」

西陣の近くに位置し、西陣織の職人により栄えてきました。個人的にこの街の舞のレベルが一番高いと思います

それぞれの花街に特色があります。あえて祇園甲部以外の花街で舞妓になるのは、落ち着いた雰囲気が好き、芸能に精進できるという理由があると聞きました

お茶屋さんとは

私が7年間アルバイトをしていたのは「お茶屋さん」という場所です

お茶屋さんと言っても、お茶はでてきません

花街でいうお茶屋さんとは芸子や舞妓がお客をもてなす場です

通常大きな和室ですが、最近ではカラオケがあるバースタイルも人気です

お茶屋で提供するサービスは大きく分けて2つあります

  1. 宴会宴会
  2. 後口(あとくち)
宴会

宴会とはだいたい5時~8時の間に執り行われる、いわゆる夕ご飯を食べ、舞妓や芸子がもてなす場です

決まった料亭の料理が、岡持ちでお茶屋まで運ばれ、お茶屋の人間が宴会場に配膳します

私のアルバイト先のお茶屋では川上さん、たん熊さん、梅の井さんの3件の料亭が入っていました

料亭でも料理は食べられるので、時々お客さんはその料亭にも食べに行きます

料亭やお茶屋の女将が、お客さんの好みや、アレルギー等を把握しているので、お客さんにあった料理が提供されます

この料理は京懐石でフルコースです。お値段は1万5千円くらいが相場でしょう

宴会の中座で芸子と舞妓による舞が披露されます

後口(あとくち)

後口とは所謂二次会です。外で夕ご飯を食べ終えた客が二次会としてお茶屋に訪れ、お酒を飲みます

その際に芸子や舞妓が数人派遣され、接待します

後口の場で先出(さきだし)と呼ばれるおつまみを出しますが、お客がケーキが食べたいと言えば、女将のコネクションでケーキを探して買いに行きます

宴会よりもシッポリと芸子さんや舞妓さんとコミュニケーションをとりたい方には後口がオススメです

置屋さんとは

置屋さん(おきや)とは、舞妓や芸子が住んでいる家です

祇園甲部には10軒ほどの置屋さんがあります

中学卒業と共に、地方から親元を離れた少女が舞妓になるために、この置屋さんで住み込み、

芸子になって数年目の23.4歳頃に、一人前として置屋さんをでてアパート等に越していきます

プライベート空間はほとんどなく、大部屋に数人が一緒に寝ます

置屋さんには女将と呼ばれる舞妓や芸子を世話をするお母さん的な存在がいます

大体は代々置屋を運営しているので、女将の上に大女将という女将のお母さんも同居していることもあります

そして女将の子供の舞妓になるケースが多いです

3~5人の舞妓や芸子のお世話をする置屋が多いですが、大きな置屋は食事や掃除をするお手伝いさんも雇っているところもあります

舞妓になるにはどうしたらいいの?舞妓とは?芸子とは?

舞妓になるには?

中学を卒業した14歳の少女が親元を離れて、置屋に入ります

一応面接などもあるみたいです

やはり置屋もその娘に投資して衣食住・稽古など何百万も投資するので、アイドルさながら顔も選考対象に入ります

また、高い草履をはくので、背が高すぎても舞妓にはなれません

テレビなどで舞妓のドキュメンタリー等が放送されると、舞妓になりたいという人が増えるようです

無事に置屋に入ることの許された少女は、舞妓の修行が始まります

舞妓の修行生のことを見習いさんと呼びます

見習い期間は約1年で、この間まだ舞妓の恰好はできません

日本髪を結うために髪を伸ばし、毎日ジーパン・Tシャツスタイルです

日中は日本舞踊、三味線、茶道、書道、華道など一通りのお稽古をし、

置屋での掃除や給仕、洗濯なども見習いの仕事です

この間に「~どす」「おおきに」など京都弁をマスターします

夜の時間帯はお姉さん舞妓の着替えのお手伝いをし、バー等を併設している置屋ではお手伝いをします

約1年間の修行が終わると、晴れて舞妓としてデビューできます

舞妓にデビューできる目安として、お稽古がきっちりと身についていることのようです

舞妓になるうえで、お世話をするお姉さんが1人決められます

このお姉さんとは本当の姉妹関係よりも絆が強い姉妹関係の契りが結ばれるともいわれています

お姉さんが1人決められると、豆〇、〇子、〇菊だったり、その芸子から1文字をもらって名付けされます

姉さんの名前+本名から1文字もってくるケースも多々あります

このお姉さんが贔屓にしているお茶屋さんで舞妓デビューをします

デビューの日にはお茶屋の玄関に特別な絵が飾られ、各お茶屋に挨拶回りをします

お茶屋まわりの際に、名前が書かれた手ぬぐいが配られます

このデビューの時に旦那がつくのですが、現在は形式上だけですが、戦前では所謂スポンサーでした

ここで注記したいのは、現在社会で舞妓・芸子は1つの職種です

水商売ではありますが、舞や唄など芸を売るのが彼女たちです

ひと昔まえは枕営業のようなことがありましたが、今では一切なく、そういった行為は禁止されています

舞妓とは

舞妓になって1年間は半人前として下唇のみ口紅を塗ります

舞妓さんの唇を見ると、1年目かそれ以降なのかがわかります

舞妓の仕事は夜のだいたい17時~0時前後なので、寝るのも起きるのも遅いです

昼間はお稽古に行きますが、たまにお客さんからお昼ごはんの接待が入る時もあります

日本髪を結っているので、週に一度は髪結いさん(かみゆい)[1]日本髪を結うことを専属としている美容院。一般のカットやパーマやカラーもできるところもあるのところに日本髪を結いなおしに行きます

日本髪を結っている為、毎日髪の毛を洗えません

ですが、サラサラの髪では日本髪を結うことができないので、髪の油があったほうが好都合です

また、日本髪を崩さないように高枕をして寝るのですが、慣れるまでが肩こりに悩まされたり辛いようです

早めの夕飯を食べると、身支度をします

白粉など化粧は自分で行い、着物は男衆さん(おとこし)という着付け職人が置屋さんまで来ます

10キロ程度ある振袖とだらりの帯は、そうとうな力がないと着つけることができません

仕事が入っていない舞妓さんも、一応舞妓の身なりを整えて、いつでも仕事にいけるようにスタンバイします

身支度を終えると、かばんを持ちお茶屋へと向かいます

今ではわかりませんが、当時は舞妓一人前にならないと四条大橋を渡れない(河原町に行けない)と言われていました

舞妓さんがお酒を警察の前で飲んでも逮捕されません

実は花街は治外法権が適応されています

他にも、舞妓さんは何百万もかけて衣食住・稽古・着物・髪結い代を置屋さんが負担します

その負担額を返済するまで一人前になれないのですが、もし仮に途中で辞めてしまったりすると

稼げなかった分の費用を置屋に支払わなければなりません

そういった年季奉公は法律で禁止されていますが、花街では依然として許されているのです

芸子とは

舞妓になって20歳を過ぎた頃に芸子になります

芸子になる基準は明確にはありませんが、顔つきが大人びてくると、舞妓の恰好が似合わなくなるので芸子になります

芸子になることを襟替え(えりかえ)と言います

赤い舞妓の襟から白の芸子の襟に代わります

襟替え期間中は2週間あるのですが、その間特別な黒門付きを着てお歯黒をします

芸子になると髪を結う必要なく、日本髪の鬘をかぶったり、女将さんのような和装にあう髪型を結ったりします

芸子になり数年たつと一人前になる頃になります

一人前になった芸子は置屋を出て、アパート等で一人暮らしが始まります

今まで置屋の女将が仕事の管理をしていたのですが、置屋を出た芸子は自らスケジュール管理をします

置屋を出ると、贔屓のお茶屋が芸子の看板を持ち、仕事はお茶屋を通して入り芸子に確認をとります

置屋が仕事を管理していたうちは、まんべんなく仕事が与えられてきましたが、独立すると「人気」「不人気」の格差が大きくでてきます

舞妓・芸子のうちは結婚ができません

結婚をしたいときは辞めなければなりません

しかし、子供を持つことはできます。何人かの芸子も子供を産んで、母親に預けて芸子を続けていました

そういった芸子は代々舞妓が多く、男衆も芸子の子供が多いのも特徴です

舞妓や芸子で辞めた時ですが、里に帰り、地元の飲食店やスナックで働くケースが多いです

中卒で親元を離れて働いている為、なかなか通常の仕事をすることは難しいと思います

中には手に職を持ち、芸子をやめてビジネスで成功している人もいました

まとめ 女は愛嬌が一番!

花街、舞妓、芸子の世界が見えてきましたでしょうか?

舞妓も芸子も、生半可な志では務まりません

お客さんに気に入ってもらうことも大事ですが、祇園で一番大事なのことは祇園に気に入ってもらうこと

祇園という小さなコミュニティで生きていく為には、お茶屋さん、置屋さん、お姉さん、師匠、祇園の人々に愛されないと仕事がもらえません

いくら容姿が整っていても、愛嬌がなくては生きていけません

アルバイト先の女将が「女は愛嬌が一番」と言っていました

所謂ぶさいくな舞妓さんでも愛嬌のある娘は女将に気に入られて何度もお座敷に呼ばれます

一方、美人でも不愛想な娘は呼ばれません

また女将が「銀座のホステスは日経新聞を読み、客の話についていく」「祇園の人間は知っていても、知らないふりをしてアホになる」とも言っていました

「へぇ~、そうなんやぁ~、知らんかったぁ。教えてくれはって、おおきにぃ」と笑顔で言われると、いい気持ちになるものです

また、祇園という世界は狭い

このネット社会ですが、噂が広まるのは光よりも早いです笑

少しでも変な噂がたとうものなら、一瞬にして広まります

今日も祇園に愛されるものが祇園で生きているのではないかと思いを馳せます

次回は、祇園でアルバイトをしてみた経験談について書いていきます

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References

References
1 日本髪を結うことを専属としている美容院。一般のカットやパーマやカラーもできるところもある
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